社会人大学院としてMBAコースを開設以来25 年超、多摩大学大学院は850名を超す有為な人材を世に送り出し、すでに当該分野で中核的な地位を占める
人材も多く、社会に対し一定の役割を果たしていることを喜んでいます。それは、実際に企業経営の現場に立ってきた経験豊富な教授陣による実践指導の成果であると自負しております。
私自身は、第一次石油危機の起きた1973 年に三井物産に入社し、以来36年間、経営情報と企画を担当してきましたが、私自身の人生を変えることになったイランにおける石油化学プロジェクト
(IJPC)には思い出深いものがあります。1979 年にイラン革命、翌年にイラン・イラク戦争が勃発、このプロジェクトは今でもハーバードビジネススクールのMBAコースで、カントリーリスクを
学ぶ際のケーススタディとして必ず登場します。
当時の私はイスラエルのテルアビブ大学、ロンドンの国際戦略研究所、ワシントンのブルッキングス研究所などを行き来し、ホメイニ政権下でいかにこのプロジェクトを乗り越えるかという課題
に専心していました。結果として三井グループは大きな教訓を残してこのプロジェクトからの撤退を余儀なくされたのですが、このプロセスにおいて「課題解決型の企業経営」の重要性を思い知ら
されました。
本大学院の果たすべきこれからの役割を考えるとき、世界潮流の変化に目を向けないわけにはいきません。その一つは、アジアダイナミズムであり、もう一つが、ビッグデータ・AI時代の到来です。
ビジネスの世界に身を置く諸氏の中には、このことを実感されている方も多いことでしょう。
多摩大学大学院は、MBAをベースとして困難な課題に立ち向かっていく力を持った人間を生み出し、さらに専門性の高い分野として、デジタル経営、医療、金融、NPO・NGO、観光・ホスピタリティ、
ルール形成戦略、社会的投資などの専門を身につけることができます。
本学の教授陣は現実との対峙から得られた貴重な経験を実際に役に立つ形に体系化し、マネジメントの本質を追究しています。新しいプロジェクトに参画する情熱を持った社会人たちと相まみえる
ことに期待を膨らませています。100 歳人生を生き抜くには、人生のどこかの段階で改めて自分と向き合い、自分に必要な知とは何かを問いかけることが必要になります。これからは、新しい
先端的な研究の成果を吸収する「知の再武装」が必要になります。
あなたも多摩大学大学院で“ 知の再武装”を試みませんか。知の武装なしに、異次元の高齢化を迎えるこれからの時代を主体的に生き抜くことは困難です。
多摩大学学長(2009年度より)
寺島 実郎
1947年北海道生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了後、三井物産入
社。米国三井物産ワシントン事務所長、三井物産常務執行役員、早稲田大学大学院ア
ジア太平洋研究科教授等を歴任し、現在、一般財団法人日本総合研究所会長のほか、
文部科学省 日中韓大学間交流・連携推進会議委員、同省 グローバル人材育成推進
事業プログラム委員会委員、同省 大学の国際化のためのネットワーク形成推進事業プ
ログラム委員会委員、経済産業省 資源エネルギー庁総合資源エネルギー調査会基本
政策分科会委員、国土交通省 国土審議会計画推進部会委員、スーパー・メガリージョ
ン構想検討会委員等兼任。
1994年石橋湛山賞受賞。2010年4月早稲田大学名誉博士学位。近著に、『ジェロントロ
ジー宣言 「知の再武装」で100歳人生を生き抜く』(NHK出版新書)、『(寺島実郎監
修)全47都道府県幸福度ランキング2018年版』(東洋経済新報社)、『ひとはなぜ戦争を
するのか 脳力のレッスンⅤ』(岩波書店)、『ユニオンジャックの矢 大英帝国のネッ
トワーク戦略』(NHK出版)。その他に、主な書著は、『寺島実郎 中東・エネルギー・地
政学―全体知への体験的接近』(東洋経済新報社)、『二十世紀と格闘した先人たち―
一九〇〇年 アジア・アメリカの興隆』(新潮社)、『新・観光立国論― モノづくり国家を超
えて』(NHK出版)、『何のために働くのか―自分を創る生き方」(文春新書)、他多数。